2025年で8回目の開催となるやんばるアートフェスティバルは、世界自然遺産に登録された沖縄県本島北部「やんばる」の原風景と共に、現代アートや伝統工芸を体感、体験できる芸術祭。大宜味村立旧塩屋小学校をメイン会場に、全11会場でさまざまなアーティストの作品を鑑賞できます。
海外からの注目度も高く、日本人はもちろん、台湾や中国、韓国の観光客など、これまでにのべ35万人ほどの方が来場。沖縄県を代表するアートイベント。今回は、メイン会場である旧塩屋小学校を中心に、他会場の一部の作品と雰囲気をご紹介させていただきます。
メイン会場:旧塩屋小学校
大宜味村エリア(旧塩屋小学校以北)
名護エリア(旧塩屋小学校以南)
その他エリア会場
やんばるアートフェスティバルの鑑賞所要時間
もくじをすべて表示
メイン会場:旧塩屋小学校
2024-2025年開催となる第8回のテーマは「山原本然(やんばるほんぜん)」。本然とは、本来あるべき元々の姿という意味で、やんばるの自然や文化を動かさず、ありのままの美しさをアートと融合させていくという思いが込められています。
メイン会場は、2016年に廃校となった旧塩屋小学校。まるで海の上に建っているかようなロケーションはまさに唯一無二。ここに7〜8割の作品が展示されており、気持ち良い風を感じながらアート鑑賞ができます。車で訪れる際は、学校前の海岸沿いに駐車しましょう。係の方が誘導してくれますよ。門をくぐってすぐ目の前にある、丸い屋根の建物が体育館です。はじめにこちらでチケットを購入し、隣にある校舎へ向かいます。
入場料は一般500円(沖縄県内在住者300円)、高校生以下は無料。
購入したチケットは、校舎前の入場口でスタッフさんに手渡し。校舎そのものが展示会場となっていて、1階から2階まで自由に見て周ることができます。
▲ヘニング・ヴァーゲンブレト「マズーカの日曜日」▲
ベルリンを拠点に活動するアーティスト、ヘニング・ヴァーゲンブレトさんの作品「マズーカの日曜日」。日曜日の街の静けさから着想を得たというこの作品は、日常の忙しさでぼやけてしまう細部を表現しており、観客は静止した街を訪れる体験ができます。小さな島、沖縄で海外アーティストの作品を見られるのは嬉しいですね。
▲林響太郎 Ryu 「カタチをあたえる。」▲
映像監督の林響太郎さんと音楽家のRyuさんによる作品「カタチをあたえる。」写真がプリントされたシフォン布がゆらゆらと心地よい風に吹かれ、ここだけ時間がゆっくりすぎていくような感覚を覚えました。少し寂しげな廊下。校舎そのものがアートのようで、ただ歩いているだけでも凄く楽しかったです。
校舎1階の「YAF CRAFT MARKET」では、作家さんの作った個性豊かな作品が展示され、同時に購入もできるようになっています。港川外人住宅街(港川ステイツサイドタウン)にショップ&ギャラリーを構える「PORTRIVER MARKET」がキュレーターを務め、やんばる地域で活躍する作家や工房を中心に集めたそうです。
陶芸、ガラス工芸、ジュエリー、バッグなど、さまざまな作品が並びます。お気に入りを見つけて旅行の想い出と一緒に家に持って帰るのもいいですね。
チケットを販売している体育館ではワークショップ体験やグッズ販売もされています。中央と窓際には、昔懐かしい机と椅子を使ったカフェスペースも。週替わりでフードの出店があり、購入したものをノスタルジックな雰囲気の中いただくこともできます。
写真スポットとしても人気の窓際。目の前には塩屋湾が広がり、まるで海の上に浮いているかのよう。小さな椅子と机もいい味を出しています。数年前までここでたくさんの子どもたちの声が聞こえていたんだなぁと思うと、なんだかしみじみ。
体育館で販売されているオリジナルグッズはステッカーやTシャツ、バッグなどがありました。
やんばるアートフェスティバル
- 住所
- 沖縄県国頭郡大宜味村塩屋538(旧塩屋小学校)
- 備考
- 会期2025年1月25日-2月24日 11:00-17:00 休館日:火・水曜日※2/11(火祝)は開館
- 営業時間
- 一般500円 高校生以下無料 / 沖縄県内在住者300円
大宜味村エリア(旧塩屋小学校以北)
メイン会場である旧塩屋小学校より北側、車で10~15分ほどの範囲に会場が点在する大宜味村エリアでは、4つの会場(オクマプライベートビーチ&リゾート、やんばる酒造、大宜味村喜如嘉保育所、辺土名商店街)でアート作品を展示しています。
オクマプライベートビーチ&リゾート:沖縄県国頭郡国頭村字奥間913
やんばる酒造:沖縄県国頭郡大宜味村田嘉里417
大宜味村喜如嘉保育所:沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉1136
辺土名商店街:沖縄県国頭郡国頭村辺土名 辺土名大通り
オクマプライベートビーチ&リゾートには、永井英男さんによる砂を素材にした彫刻、やんばる酒造には大型のアート壁画、大宜味村喜如嘉保育所には2組のアーティストによる作品、辺土名商店街には伊藤綾さんがデザインを手がけたアーティスティックなコインランドリーが登場。
今回は、大宜味村喜如嘉保育所の作品をご紹介します。メイン会場の旧塩屋小学校から車で10分程度。入場料が必要なのはメイン会場のみで、ここではチケットの購入なども必要なく、誰でも自由に作品を鑑賞することができます。車で訪れる際は、建物の目の前のスペースに駐車しましょう。
どこか懐かしさを感じる廊下。周囲には緑が生い茂り、建物が自然に還っていきそうな雰囲気が漂っていました。
▲大宜味村喜如嘉保育所 会場イメージ▲
園内の中心には、2009年に広島で結成された ”チームやめよう” の作品である「カメ人見知り」を展示。チームやめようは、社会や人間関係が成熟するにつれて増えていく「やめたくてもやめられない」をテーマに活動する芸術家集団。今回の作品は、「みんな仲良く前を向いて生きたい」という平凡な願いを込めて制作されたそうです。–>
▲麥生田兵吾 「Edge Complex」が展示されている空間▲
写真家・麥生田兵吾さんの作品・写真に込められたテーマは「Edge Complex」。社会から人間関係、生命にいたるまで、あらゆるところに存在するコントラスト、そこにあるようでない「線」についての思索が写真作品となっています。
名護エリア(旧塩屋小学校以南)
旧塩屋小学校より南側の名護エリアでは、3つの会場(オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ、カヌチャリゾート、名護市民会館)でアート作品を展示しています。旧塩屋小学校からはそれぞれ車で30~40分ほどです。
オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ:沖縄県名護市喜瀬1490-1
カヌチャリゾート:沖縄県名護市字安部156-2-1
名護市民会館:沖縄県名護市港2-1-1
オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパには2組のアーティストによる作品、カヌチャリゾートには椿昇さんによる巨大オブジェ、名護市民会館にはアグー像が展示されています。
今回は、オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパに展示されている作品を見に行ってきました。作品が展示されているのは、入り口正面にあるラウンジ。宿泊者専用のスペースとなっていますが、スタッフの方に声をかければ鑑賞・撮影するためにラウンジ内に入ることはできるそうです。
You Ru Maru「Dance with me・水鏡」/PR TIMES プレリリースより引用
オリエンタルホテルでは過去7回にわたって作品を展示しており、今年もアートユニットYou Ru Maruによる大型作品が登場。作品名を「Dance with me・水鏡」とし、やんばるの豊かな水源と燦々と降り注ぐ光が水鏡として表現されています。
さらに、館内レストランのパティオでは、やんばるアートフェスティバルとアーティスト淀川テクニックさんとのコラボレーション企画で製作された「やんばるオオゴミウオ」も鑑賞できます。
オリエンタルホテルをはじめ、複数ホテルがやんばるアートフェスティバルのサテライト会場となっているので、宿泊してのんびりアートな旅を楽しんでみるのもいいですね。
その他エリア会場(恩納村、那覇市)
ここまでご紹介した各会場のほか、「星野リゾート BEB5沖縄瀬良垣」や「ホテル アンテルーム 那覇」も、やんばるアートフェスティバルのサテライトプログラムのひとつとして参加しています。
BEB5沖縄瀬良垣は、幅広い世代から支持を受けているイラストレーターChocomooさんとコラボ。館内の至る所で、Chocomooさんが描くモノクロの繊細なイラストに出会うことができます。
アンテルーム那覇では、ニューヨークを拠点にする沖縄出身の写真家・Tokio Kuniyoshiさんの展示企画「REGION FREE」を開催。ニューヨーク×沖縄のオリジナリティ溢れる写真作品を鑑賞できます。
星野リゾート BEB5沖縄瀬良垣:沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣1860-4
ホテル アンテルーム 那覇:沖縄県那覇市前島3-27-11
やんばるアートフェスティバルの鑑賞所要時間
メイン会場である旧塩屋小学校は、ささっと見れば1時間ほど、じっくり見たい方は2時間ほど確保しておくことをおすすめ。会場のロケーションが素晴らしく、肩ひじ張らずにアートを楽しめ、ついつい長居したくなってしまいます。大宜味村喜如嘉保育所など、その他の会場は30分ほどあれば十分アートも空間も楽しむことができるでしょう。
冬の沖縄にもたくさんのアクティビティがありますが、時には日常の喧騒を忘れ、やんばるの大地がもたらす穏やかな時間と、アートの息吹に触れる沖縄トリップを楽しんでみてはいかがでしょうか。