2021年、沖縄本島北部に広がるやんばるの森が、世界自然遺産に登録されることが決まりました。鬱蒼とした深い緑の中で、独自の生態系が広がるやんばる森には、世界でもここにしか生息していない、貴重な固有種の鳥が存在します。その鳥の名は「ヤンバルクイナ」です。
その名前は聞いたことがあっても、ヤンバルクイナの正体ついて知らない人も多いのでは。そこで今回は、ヤンバルクイナについてご紹介します。
■ヤンバルクイナってこんな鳥
■ヤンバルクイナの鳴き声
■ヤンバルクイナが目撃される場所
■ヤンバルクイナ生体展示学習施設「クイナの森」
■おわりに
もくじをすべて表示
■ヤンバルクイナってこんな鳥
ヤンバルクイナの調査が行われたのは今からおよそ40年前。やんばるに住む人たちは、それ以前から山鳥という意味で「ヤマドゥイ」と呼んでいた鳥ですが、1981年に新種として捕獲され、「ヤンバルクイナ(やんばる地域のクイナ-ツル目クイナ科の鳥類)」という名が付けられました。1982年には国の天然記念物にも指定されました。
体長は約30cm。ひなは黒い羽毛で覆われていますが、大人になると喉からお腹にかけて白黒の縞模様になり、くちばしは鮮やかな赤色になります。オスとメスで見た目の違いはありません。鳥の象徴である翼は丸く短く、筋肉が発達していないため飛ぶことは出来ません。日本で唯一の「飛べない鳥」とも言われています。
マングースやノネコに襲われる被害や、交通事故などにより、一時は個体数が700羽程度まで減少してしまいました。その後、保護活動やマングースの駆除対策などが行われ、現在はその数・生息域とも回復傾向がみられます。2012年には人工ふ化も行われています。
■ヤンバルクイナの鳴き声
ヤンバルクイナにとって鳴き声は情報伝達の手段。「ケッケッ」「ググッ」「ククル」など、いくつか種類があることで知られています。音量も大きく、500m程度鳴き声が届くという報告もあります。
やんばるの森では様々な鳥の鳴き声が響きますが、こちらでご紹介したような鳥の鳴き声が聞こえたら、近くにヤンバルクイナがいるかもしれません。1匹が鳴くと、周辺にいるヤンバルクイナも反応して鳴き出すことがあるそうです。ヤンバルクイナの鳴き声については、様々な論文が出ており、研究の対象にもなっています。
■ヤンバルクイナが目撃される場所
国頭村東海岸を通る県道70号線の、安田から楚洲の区間は、野生のヤンバルクイナが多く現れるエリアとして知られています。特に5月から7月はヤンバルクイナの繁殖期にあたり、餌を探す親鳥の動きが活発になります。早朝や夕方には、路上にも姿を現す可能性が高いです。周辺の道路には「ヤンバルクイナ注意」の標識もあります。
ヤンバルクイナはとても臆病な性格です。もしその姿を発見しても、近寄るとすぐに逃げてしまうので、遠くから静かに見守るようにしましょう。餌を与えたりすることは、絶対NGです。
ただ実際は、その姿を見ることが出来るのは稀。野生のヤンバルクイナの行動などについても、未だ不明な点が多いとされています。
■ヤンバルクイナ生体展示学習施設「クイナの森」
Photo by Wikipedia/Hisenv
そんな貴重なヤンバルクイナの姿を、いつでも見られるのが「クイナの森」です。こちらの施設では、沖縄の森が再現されたスペースに、ヤンバルクイナが飼育されています。ここにいるヤンバルクイナの名前はクータ。初代の「キョンキョン」に次ぐ二代目です。人っこい性格の人気者で、ガラス越しにすぐ目の前までやって来てくれます。
Photo by Wikipedia/Hisenv
愛くるしいヤンバルクイナの動きに心を奪われると、時間を忘れて夢中になってしまうことも。
施設ではスタッフの方の説明を聞くことが出来るだけではなく、ヤンバルクイナの生態や生息環境などについての資料もあります。ヤンバルクイナが飼育されているのは、世界でもここだけです。
■おわりに
ヤンバルクイナのことを知ることは出来ましたか。ヤンバルクイナは個体数も少なく、沖縄の豊かな自然の中で生きる貴重な固有種です。沖縄で育まれた独自の生態系を未来に残していくためにも、大切にしたい存在です。やんばるを訪れたときは、森の中で耳を澄ませてみてはいかが。