やちむん、それは沖縄で400年以上も続く焼き物のこと。
多くの陶芸家がこの世に生み出す作品はどれも素晴らしいものばかり。ですが、中でもひと際輝く作品があることをご存知でしょうか?
今回ご紹介させていただくのは、沖縄の人気陶芸家 小泊良(こどまり りょう)さん。
2017年5月13日(土)から5月21日(日)まで、東京。銀座の”桜ショップ”で開催された個展へお邪魔し、その魅力について取材をさせていただきました!
<もくじ>
1.銀座 桜ショップ 「小泊良 うつわ展」に潜入
2.小泊良さん×桜ショップディレクター三富さん+ラボインタビュー
3.小泊良さんのうつわたち
4.うつわのある暮らし(沖縄ラボ編集部が育てるフックカップ)
おわりに
1.銀座 桜ショップ 「小泊良 うつわ展」に潜入
2017年5月13日(土)、小泊さんが在廊されているということでお邪魔した「桜ショップ」。
普段はダイニングテーブルや椅子など、無垢材を使用したオーダ家具を製作・販売しています。
ご縁があり、2年に1度こちらで小泊さんが個展を開かれているそうです。
使うほど味が出てくる木のしなやかさが小泊さんのうつわをより引き立ててくれているのがわかります。
OPEN11:00を控え、9:00頃からすでに小泊さんファンがお店の中を覗き、ガラス越しに楽しんでいるかたも見受けられました。
小泊良さんは沖縄本島の今帰仁(なきじん)に工房を構えて作陶されている、人気の高い陶芸家。
どこにもない斬新かつ優しい器たちを次々と生み出し、その魅力は沖縄だけにはとどまらず、北海道や台湾などにも届いています。
いったいなぜそんなに魅力があるのか・・・気になるところですよね。
そして代表作でもある「フックカップ」は有名なカフェや旅館でも使われるほど。
どうやったら手に入るのか調べても、全国で売っているショップはほとんどが品切れ状態という人気の高さなんです。
そこで多くの人を魅了してやまない「うつわ」についての是非を知りたいと、桜ショップさんの協力を得てインタビューすることができました!
2.小泊良さん×桜ショップディレクター三富さん+ラボインタビュー
個性あるダイニングテーブルに作品が並び、陶芸家小泊良さんと桜ショップディレクター三富誠さんにお伺いする機会をいただきました。
~インタビュー~
―――静岡ご出身の小泊さんが今帰仁で焼き物をすることになったキッカケは?
【小泊さん】
沖縄県立芸術大学を卒業し、結婚を機に今帰仁村に工房を構えました。もともと土で何かを作ることが好きだったので、何とかメドも付き、これならできるかなぁと。
―――桜ショップさんとの出会いを知りたいです。
【小泊さん】
もともとは10年ほど前に愛媛県で展示会を行った際、器を買ってくださったお客様がお茶会を開き、その時高松にある桜ショップ本社の会長さんが私の器を使ってくれた時に気に入ってくださり、「展示会をしませんか?」というお誘いを受けました。
ですので2008年に初めて桜ショップさんで展示会を開いたのは高松店だったんです。
それから繋がり、今は高松店、銀座店と毎年交互に開催しています。
―――人気のフックカップが生まれる瞬間はどんな感じなのでしょうか?
【小泊さん】
これは持ち手がカップの胴体にひっかかってる感じなんですけれども、普通は土に持ち手をくっつけて焼きますよね。
フックカップの場合は、“土”同士がくっついてないんです。
別々に作ってくっつけずに置いておくんです。
そして本焼きで焼くときに土のところにひっかけて焼くんですよ。
そうすると焼き物の釉薬(ゆうやく※ガラス質の液体をコーティングしたもの)が溶けてくっつくという作りなんです。
最初からくっつけて作るよりも違った作り方をすると、また面白さがでるんじゃないかと。普通の作り方よりも自分に合ってるんじゃないかと思います。
―――フックカップは今後も作り続けていく予定でしょうか?
【小泊さん】
あの形態であえて色を変えたりだとか、表面上のデザインというか、絵柄を変えていくというやり方をすれば、いくらでもバリエーションを増やすことができるので、あれは多分これからもずっと作り続けていくと思います。
作り始めの頃はそんなに注文はなかったんですが、有名なカフェで使って紹介してくれるようになってから火がついた感じです。
実際このカップを持ち帰って、家で珈琲を飲みたい・・・というかたが増えていって、そこから自身のカップを販売してくれている「陶・よかりよ」さんのショップへと足を運んでくれるようになりました。
やっぱり使ってくれるカフェが増えたことは大きいですね。
―――焼き物が初めてのかたへ、うつわは何から買うのが良いでしょうか。壺?お皿??
【小泊さん】
やっぱり一番キッカケとして手に取りやすいのはカップではないでしょうか。
うつわって、使ってみないとわからないことも沢山あると思います。
手に取って、口に付けて、カップの形状だったり質感だったり、それによって味が変わるんですよ。
それは珈琲に限らずビールとかもそうですが、うつわによって味が変わるのはうつわの良さが分かりやすいですし、こんなにも違うんだ、ということを色々と試していただけたらと思います。
―――桜ショップさまへ足を運ばれる小泊さんファンの年齢幅は?
【三富さん】
そうですね、年齢幅は広いですね。
極端に若いかたは少ないかもしれませんが、30代くらいからの方が多いですね。
やはりどこかでご覧になったとか、あとは立地的にOLさんも多いので、ウィンドウ越しに見られて入って買われていくかたもいらっしゃいます。
小泊さんの物自体がとてもチャーミングなので、男女問わずやっぱり惹きつけられる魅力があるのでしょうね。
【三富さん】
確かに壺類に関してはまた違った美意識を求められることが多いですが、食に関することは身近です。
「これで飲んだら美味しくなるだろうな」と、試してみたくなりますよね。
おそらく何で飲んでも味は同じだ、と最初はみなさん思われていると思いますが、実は陶器だと、ビールだったらキメが細かかったり、まろやかになったりと全然変わってきます。
カップ1個からスタートしていって、これを持っているから今度はこれを買いたい、など幅広く親しんでもらえたらと思います。
2年に1度ですが、次はどんなものがテーマでくるんだろう・・と楽しみです。
―――最後に・・沖縄で陶芸体験をされるかたへのアドバイスをお願いします。
【小泊さん】
その陶芸家さんによって作り方が違うと思いますが、一番は「作ったものを使う」というところまでイメージできると良いと思います。
ただ土からうつわを作る工程を楽しむだけではなく、そのあとそれを家に持ち帰って使えるんだ、というところまで考えて作ればより楽しいのではないでしょうか。
3.小泊良さんのうつわたち
まるで自分の子供のように大切にしているうつわたち。
旅立つ姿を小泊さんは優しいまなざしで見つめていました。
よく、子供に陶器を使わせたくても割ってしまって勿体ない・・。と思うかたが多いそうですが、それは違うと小泊さんは言います。
「逆に子供さんにも使ってもらって、割れてしまうかもしれない物の大切さを教えてあげてほしい」と思われているそうです。
画像提供:小泊良 ~工房より~
小泊さんの工房は自宅と兼用になっているため、あえて非公開。
手に取って買うことができるのは沖縄のショップさんや各個展先のみ。
そんなプレミアムな出会いは小泊さんの公式ホームページで公開していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
インタビュー内で出てきた「陶・よかりよ」さんは沖縄本島にありますが、旅先で立ち寄った際小泊さんの作品に巡り会えたらかなりラッキーです!
足を運んでみる価値あるお店ですよ♪
4.うつわのある暮らし(沖縄ラボ編集部が育てるフックカップ)
実際にフックカップを連れて帰り、使ってみた感触は・・・。
まず取っ手が広いので持ちやすいです。
人差し指と中指を入れても余裕で、フックのようにかかっている場所に親指を置けるので安定感もあります。
三富さんが言われていた通り、陶器で珈琲を飲むとまろやかで美味しい感じがしました。
口に付けてもザラザラ感がないので、大変使いやすいです!
そしてもう1つ、ぜひ焼き物で楽しんでほしいのが「貫入」です。
貫入とは、陶器の内側に入る「ヒビ」のこと。※欠けてしまうヒビとは違います。
よく、「どうしよう!ヒビ入っちゃった!」と心配になるかたも多いのですが、これは温度差によってできる個性なんです。
少しずつ少しずつこの「ヒビ」に飲み物の色素が入っていき、美しい模様ができあがります。
2つとないこの模様を大切に育てていくのも、魅力の1つなんですよ♪
内側が白い、無地ほどハッキリ浮き上がってきますので、自分だけの模様を楽しんでくださいね♪
おわりに
画像提供:小泊良 ~工房より~
いかがでしたでしょうか?
焼き物の深さや陶芸家の心を知ることは、今後沖縄旅行へ行った時にも役立つと思います。
小泊さんは物腰柔らかで穏やかなかた。そしてその心が表現された “うつわ“を手に入れて、自分色にゆっくり育ててみてくださいね。
【小泊良】
小泊 良 blog
・http://ryonakijin.blog90.fc2.com/
小泊 良 HP
・https://ryokodomari.jimdo.com/
~取材協力~
桜ショップ 銀座店
東京都中央区銀座3-10-7ヒューリック銀座三丁目ビル1F
03-3547-8118
・http://www.sakurashop.co.jp/ginza/
沖縄 陶・よかりよ
沖縄県那覇市壺屋1-4-4
定休日:水曜日
・http://yokariyo.com/