出典:環境省ホームページ
2021年7月「奄美大島・徳之島・沖縄本島北部および西表島」が世界自然遺産に登録されました。
世界遺産登録の原動力となった琉球弧(りゅうきゅうこ)の自然。その限られた地域には多くの固有種が存在し、その保全の必要性が認められたのです。
この記事ではそんな琉球弧の自然にクローズアップし、琉球弧の紹介、世界遺産登録対象エリアとなった沖縄県本島北部(やんばる)と西表島に存在する固有種をご紹介します。
1.琉球弧ってどこ?その成り立ち
2.琉球弧の固有種をご紹介
2-1.沖縄県本島北部(やんばる)エリア
2-2.西表島エリア
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1.琉球弧ってどこ?その成り立ち
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琉球弧は、九州の南から台湾にかけて連なる島々の総称。
まるで弧を描くように連なっていることから「琉球弧」と呼ばれています。
周りを海に囲まれた島の自然は長い時間をかけて独自の進化を育み、生息する生き物全体に対する固有種の割合は類まれなる高さとなり、絶滅危惧種に指定されているものも多数あります。
2.琉球弧の固有種をご紹介
ここからは琉球弧の固有種を、沖縄県内2エリア―本島北部の「やんばる」と「西表島」―、それぞれのエリアから5種類ずつピックアップしてご紹介します。
2-1.沖縄県本島北部(やんばる)エリア
ヤンバルクイナ
画像提供:環境省ホームページ
ヤンバルクイナは、沖縄県内外に認知度の高い琉球弧の固有種。チャームポイントの赤いくちばしが特徴的で、その愛くるしい見た目に定評があります。翼はあるものの体の大きさと比べて小さく、かつ飛ぶための筋力が発達していないことから、「飛べない鳥」と言われています。沖縄県北部の国頭村にある「ヤンバルクイナ生態展示学習施設クイナの森」では、ヤンバルクイナが飼育されていて、イキイキとした様子を観察できますよ。
ノグチゲラ
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ノグチゲラは、木をつついて幹に穴を開ける「キツツキ」の仲間。全身を包む黒と褐色の羽毛が特徴的で、可愛らしい姿がポイント。「沖縄県の鳥」として指定されていて、沖縄県を代表するシンボルとなっています。名前の通り「ノグチ」という人が捕まえた鳥のため、「ノグチゲラ」になったと言われるネーミングにも要注目です。
ヤンバルテナガコガネ
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ヤンバルテナガコガネはコガネムシ科の甲虫類の仲間です。名前の通り長―い手が特徴的な固有種(正確には手ではなく、前脚なんだそう)。そんなヤンバルテナガコガネの特徴は、前脚だけじゃありません。「大きさ」にも要注目。カブトムシを抜き、実は日本で最大の甲虫と言われています。国の天然記念生物として指定されている貴重な昆虫です。
リュウキュウヤマガメ
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リュウキュウヤマガメは、ヤマガメの仲間です。まるで落ち葉のような甲羅には3本の隆起が確認でき、赤みがかった表情が特徴的です。
立派な甲羅が凛々しさを感じさせる反面、サイズ感は大人の手の平ぐらいと、そのギャップにやられてしまいます。
ときどき街中や人の前にひょっこりと姿を現しては、地元紙の話題になるおちゃめな一面もリュウキュウヤマガメの魅力です。
クロイワトカゲモドキ
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クロイワトカゲモドキは、赤い瞳とシュッとしたスマートな表情が特徴的な琉球弧の固有種です。「トカゲモドキ」という名称の通り、実はトカゲではなくヤモリの仲間。ヤモリの仲間として原始的な特徴を残していることから「生きた化石」と呼ばれています。
国の天然記念物に指定されている貴重な生きものです。
2-2.西表島エリア
イリオモテヤマネコ
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イリオモテヤマネコは、その名の通り西表島にしかいないヤマネコです。体全体に広がる斑点と、目の周りが白い線で囲われているのが特徴的。
スマートな表情とは裏腹に、胴長短足な体と太~いしっぽの愛くるしいフォルムは、つい心奪われてしまいます。西表島を代表する琉球弧の固有種です。
カンムリワシ
カンムリワシは、名称の通りワシの仲間です。後頭部から冠羽(かんう)と呼ばれる長く伸びた羽根が生えることから「カンムリ」の名前がついています。
沖縄出身の元プロボクサー「具志堅用高」さんは、現役当時「カンムリワシ」の異名がついていたなんてエピソードも。
西表島の上空を飛び回っているため、比較的遭遇しやすい琉球弧の固有種かもしれません。
キシノウエトカゲ
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キシノウエトカゲは、長~い胴体と、長~い尻尾が特徴的で、一見するとヘビに見間違えてしまうようなフォルムです。そんなキシノウエトカゲの注目ポイントは、「大きさ」にあります。日本産トカゲの中で最大の大きさを誇ると言われているんです。大きいものだと、最長40cmにもなるケースもあるんだとか。1975年に国の天然記念物に指定されています。
イシガキトカゲ
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イシガキトカゲは、最大でも15cmほどにしか成長せず、日本にいるトカゲの中で最小と言われています。幼体のころは黒色の胴体に引かれている黄金色の縦線と、青く輝く尻尾が特徴的です。日本最大のトカゲ「キシノウエトカゲ」と、日本最小のトカゲ「イシガキトカゲ」が1つの島にいるというのも、対照的で面白いですね。
ヤエヤマセマルハコガメ
ヤエヤマセマルハコガメは、ドーム状に高く盛り上がった甲羅が特徴的。そんなヤエヤマセマルハコガメの注目ポイントが、甲羅を完全に閉じれること。どうやら甲羅にピッタリと、ふたが出来るため「箱亀」と言うそう。国の天然記念物に指定されている貴重な動物です。
おわりに
この記事では、世界遺産勧告の原動力となった琉球弧の自然についてご紹介しました!琉球弧は希少な生きものたちが暮らす自然の宝庫となっています。
ただ、近年は車によるヤンバルクイナの事故をはじめ、生きものたちが人の手によって減少傾向にあるという側面も。
希少な生きものたち、豊かな自然を残していくためにも、旅を楽しみつつこの環境を残していくアクションが出来ればより旅行を楽しめるかもしれませんね。